送り主のいじけた心が透けているメッセージに既読をつけて、七海はかぼちゃのパイを冷蔵庫に仕舞った。パイは今日のデザートのメインだ。一仕事終えた七海は休む暇なく、紙袋いっぱいのお菓子を携えて高専に向かった。ハロウィンの七海には、恋人から請け負った大役が待っている。
高専内にいた学生にお菓子を配り、余った分を補助監督にお裾分けして、七海の仕事は終わった。帰りにバニラアイスを買うのも忘れていない。
そうして辿りついた自宅の玄関は朝から変わりない。見慣れた靴が増えている、なんてサプライズはなかった。気落ちしているのを自覚しながら、七海はテキパキとアイスを仕舞って夕飯の支度を始める。予定通りに恋人の帰宅は遅くなるようだ。一人の食事は好物を並べても味気なく、手抜きをしそうになるのをグッと堪えて、けれど簡単なもので済ませる。
恋人からの定期連絡という名目の絵文字は、ちょうど夕飯を食べ始める頃で終わっていた。内容はカエルが一つだけ。これは言葉遊びととるべきか、ダジャレととるべきか。
軽やかなインターホンに、七海の思考は遮られる。合鍵を渡したはずの恋人は、出迎えられるのが嬉しいと言って、あまり活用してくれない。しかし七海もその言葉を嬉しく思ってしまったのだから同罪かもしれない。
七海の前では気の抜けた姿も見せるかわいい恋人を出迎えに、七海は玄関に向かった。