SS 朝に強い/朝に弱い

五条の自宅の寝室は、南側の窓に沿うようにベッドが配置されている。よく晴れた夏の日は朝から燦々と陽光が差してくるし、近くの木から小鳥の囀りなんかも聞こえる。大変健康的な起こされ方だと、五条は自負している。けれど朝に弱い七海にとっては違うようだ。
任務のない朝、七海は起こされないと起きないし、起こされても二度寝三度寝をしようとする。
「七海、まだ起きないの〜?」
「あとじゅっぷん……」
ムニャムニャと聞こえそうなゆるゆるの声で返す七海は、実は二度寝の真っ最中だ。気の抜けきった声がまた可愛らしくて無理に起こす気にもなれず、五条は二杯目のカフェオレを入れることにした。

◆ ◆ ◆

七海は朝が弱い。任務がある日には気合で起きているだけで、可能ならば三度寝くらいはしたい。
対して、恋人の五条は滅法朝に強い。家庭環境諸々が絡んだ結果なので突っ込んで訊くことはないが、そんなところまで最強だ。けれどその五条が、七海よりもずっと遅く起きる朝がある。
「五条さん、起きられますか?」
「ん……おきる、起きられる……」
夜更けを過ぎても盛り上がった翌朝、五条は七海が起こすまで寝過ごし、何くれとなく七海に世話を焼かせようとする。ワガママも三割増しだ。
しかしまあ、そうした無防備な五条を見られるのも恋人特権なので、七海は今日も張り切って世話を焼いている。