そう、結局、コックリさんなんて迷信だったのだ。調査所の所長にもらったお守りはおかしな反応を見せることなく、ただの鈴としてぶら下がっている。復帰した三人と蘭と一緒に笑いながら、藍子は一人、したり顔で頷いた。
「それじゃあ、三人一組になってください」
にわかに教室が騒がしくなる。来週の校外学習に向けて、班決めをしている真っ最中なのだ。立ち上がったクラスメイトが椅子を引きずる音や、机ごと移動する音が響く。あとは絶え間ないお喋りの声だ。
「どう分かれる?」
蘭に訊かれて、藍子は少し悩んだ。麻里奈と春香と詩織と蘭と藍子、五人では一人足りない。いつもなら交友関係の広い麻里奈か詩織が、仲良しのクラスメイトを連れてくるところだ。しかしそこで、藍子は「あ」と声を上げた。
「雪も誘おうよ」
藍子の言葉に顔を見合わせた四人は、ついで首を傾げる。そうしてピタリと同じタイミングで、藍子を振り向いた。代表するように、麻里奈が困惑しながら口を開く。
「雪ってだれ?」
反射的に言い返そうとして、藍子は言葉に詰まった。思い出せない。そもそも、そんな子はいたのだろうか。
「……だれだっけ?」
「ちょっと、寝ぼけないでよぉ」
混ぜっ返すように笑う詩織と戯れているうちに、藍子の抱いた違和感は溶けて消えてしまった。