初めての恋人に浮かれた五条は、七海に似合いそうと思えば、値札を見ずに買った。最初は遠慮しながらも喜んだ七海も、贈り物が積まれていく内に渋い顔になっていった。
最終的に、贈り物は記念日のみとなり、上限金額も決められた。
「……五条さん」
向かい合う二人の前には、タイピンが一つ。
ゴメンナサイは、もう一年分は言い尽くした。あとはご機嫌取りだけだが、ここで嘘を言えば拗れるばかりなのは知っている。恥ずかしさに耐えることが重要なのだ。
「七海がつけてくれたら、七海に惚れ直した記念日、なんて」
顔を手で覆って黙り込んだ七海を見て、五条は今日の勝ちを確信した。
◆ ◆ ◆
七海には悪癖がある。五条は否定するだろうが、七海は悪癖だと自戒する。疲れていたから、というのは言い訳だ。
「先日はタイピンを有難うございました。なので今日は五条さんにお返しをしたいのですが」
「う〜ん、外商呼ぶ?」
「いえ、一日使っていっぱい見たいので」
「……そっか〜〜〜」
などという会話を、七海はカードの明細を見て思い出した。このあと、説得を諦めた五条を伴って、七海はデパートのハシゴをしたのだ。
五条には苦言を呈していながら自分のことは棚上げして、と自責の念はある。忸怩たる思いもある。あるのだが、お返しを着てデートに来る五条が可愛いので、改善の見込みはない。