二口分くらいにカットされたそれは皿の上に三切れ重なっていて、つまりは六口で終わってしまうわけだ。その量が少ないのか多いのかは五条にはわからない。けれど一つだけ確かなことは、しっかりと後悔しないように堪能しなければいけないということだ。
もしかしたら、五条に甘い七海はもしかしたら、おかわりを用意してくれているかもしれない。しかし、最初からそれを目当てにするのは少しがっつきすぎな気がする。意を決して、五条は上に重なる一枚を手に取った。
「おいし〜〜〜!」
ザクザクとした食感のアーモンドヌガーは甘く香ばしく、クッキー生地は塩気が利いていて、ホロホロと口の中で崩れていくのがまた美味しい。
「僕、クッキーの中でこれが一番好き」
「アイスボックスクッキーではなかったんですか?」
「んんん……どっちも好き」
恭しく二切れ目を持ち上げて、パクリと一口食べる。持ち上げた仕草には慎重さと丁寧さがあったけれど、フロランタンに齧りつく一口は大きく豪快だった。よく噛んで味わって呑み込んで、残りを口に放り込めば、二切れ目も瞬く間に食べ終わってしまった。
最後の一切れを、五条はじっと見つめる。見ていたところで増えたりしないことはわかっているが、これで最後と思うと、五条の手は接着剤を使ったかのように動かなかった。
「もう少し持ってきましょうか?」
「いいの? あ、でも……」
「大丈夫ですよ。明日はまた別のを作りますから」
そう告げる七海は既にキッチンに向かっていて、ならば甘えてしまえと五条は最後の一切れを食べ始めた。何せ、七海は五条を甘やかすことを楽しんでいるらしいので。