失火か放火かは現在捜査中で、しかし不用品が積み重なった一角だったらしく、失火ではないかというのが近隣住民の総意だ。
しかし、と神尾は思う。
隣町の住民は知らないかもしれないが、神尾の町を挟んで反対側でも、先月にボヤ騒ぎが起きたのだ。こちらは失火ということだが、立て続けに起きると不安になってしまう。
乾いた落ち葉は燃えやすいからと、夕方にも増やした掃除をしながら神尾はため息を吐く。
「神尾さん、どうしましたか」
掃除の手も止まった神尾に、まさに帰宅途中という七海が声をかけた。七海に気づいた神尾が慌てて会釈をすると、七海も立ち止まって軽く頭を下げる。律儀な人だ。
「いえね」と世間話を始める。個人的なことではなく、先月から続いているように思えるボヤ騒ぎの話だ。
そう、神尾には続いているように思えるのだ。
得体の知れないものが近づいてきて、運良く通りすぎていったけど、まだ近くを彷徨いているような。直ぐ近くの物陰に隠れて機会を窺っているような、そんな不気味な違和感を覚えるのだ。
しかし、そんな感覚は神尾が個人的に感じているもので、いたずらに吹聴するのも良くないだろう。
「物騒だから気を付けて」なんて月並みな言葉を最後に、その場はお開きとなった。