管理人の話

神尾には孫がいる。
目にいれても痛くない二人は女子高生と男子高生で、部活動に精を出して、日々忙しく過ごしているらしい。孫娘の方は今年が部での最終学年らしく、今までよりも帰りが遅い日が多いらしい。心配だ。
それでも頑張る二人は溌剌としていて、見ているだけで元気がもらえるようだ。
そんな孫たちの通う高校で、最近、不審者が出ると噂になっているらしい。
孫息子によると、それは公園によく出るらしく。唸って威嚇してくるだとか、見ていると知られたら拐われるとか、襲いかかってくるとか。
色々な噂の付きまとうそれは、しかし実際に見たものはいないらしい。孫息子の知る範囲では。
「それは物騒ですね」
あまり信じていない噂話を引っ張りだしたのは、帰宅途中の七海と想定外に立ち話の機会が生まれたからだ。
見上げるほどの高身長の七海には注意喚起も必要ないかもしれないが、しておいて無駄にはならないだろう。何より、私生活のあまり窺えない七海との会話の切っ掛けが思い付かないというのが、本音だった。
「本当にねぇ」というお手本のような相槌を返すも、実態のしれない不審者の話など、それ以上広がるはずもなく。
二人の世間話はその後直ぐに解散となった。